気まずい再会

私は今、職探しをしている。

アルバイトすら中々、見つからない。

確かに私は大した学歴も無ければ、何の資格も無い。

自動車の運転免許すら無いのだからねぇ。

雇用する方からしたら、高卒の無資格者なんて勘弁というところだろう。

今日も職業安定所に行ったが、何の収穫も無かった。

途方に暮れて、自宅へと向かっている。

そういえば、今日はまだ食事をしていない。

まだ昼間だが、日も大分、傾き始めていた。

さすがに腹が空いたので、何か食べようと思い辺りを見回すと、一軒のラーメン屋が目に入る。

ラーメン屋を見た瞬間にラーメンが食べたくなった。

迷わずに、そのラーメン屋へ向かう。

結構、広いラーメン屋だったが、客は三人しかいなかった。

時間帯が時間帯だけに、こんなものなのだろうか。

席について店の壁に貼ってあったメニューを見る。

店主なのかは分からないが、ラーメンを調理していた者の顔が目に入った。

見覚えのある顔だなぁ。

高校の同級生だったかな。

名前は確か『伊藤』だったと思う。

懐かしいなぁ。

でも、私は『伊藤』と決して仲が良かった訳では無い。

それどころか、私は友達と呼べる者が一人も居なかった。

学生時代はいつも一人ぼっち。

『伊藤』は不良グループにいて、かなり目立った存在だった。

一度だけ同じクラスになった事があるが、私の記憶に間違いが無ければ一度も言葉すら交わした事が無い。

はっきり言って、同級生であっても、住んでいる世界が違った。

懐かしさと共に、そんな事を思い出す。

気が付くと、他に居た三人の客が居なくなっていた。

「源か!?」

伊藤の方から声がかかる。

「伊藤だろ!?」

私は確認をした。

「久しぶりだなぁ。何年ぶりだ?」

「高校の時以来だよな」

「その高校の時に話をした事は無かったよな!?」

やっぱり。

私の記憶は間違いじゃなかった。

「そうだね。記憶に無いよ」

そう言いながら、私は苦笑する。

「今、何やってんの?」

「あぶれちゃってさ、職安通い」

私は再び、苦笑するしかなかった。

「そっか。大変だな」

「此処は伊藤の店なの?」

「一応ね。でも、家業を継いだだけだから」

「伊藤んチってラーメン屋だったんだ」

「家は別だけどねぇ」

「でも、すごいじゃん」

「だから全然、すごくないんだって」

今度は伊藤が苦笑した。

「そうなの!?」

「親父の奴が無駄に店を広くしちゃったからねぇ」

「確かに個人経営のラーメン屋にしては広いのかな!?」

「店を守っていくのも大変」

「そっか」

「親父の店だから、頑張ってはいるけど、いつまで守れるか」

「そんなに厳しいの!?」

「ああ。職安通いが出来る源が羨ましいよ」

「何言ってんだよ。仕事が出来るだけありがたいって」

「まあ、それもそうだけど。お互い無い物ねだりなのかね!?」

「確かに」

「それで何にすんの?」

「ああ。何かお勧めはある?これを食べて欲しいってのがあったら」

「だったらウチは五目かなぁ」

「じゃあ、それで。五目は好きだから丁度いい」

「OK」

調理中、そして私がラーメンを食べている最中も二人で他愛のない話をした。

学生時代には同じクラスになっても一度も話す機会すら無かった相手と。

正直、私は気まずかった。

伊藤も気まずさはあっただろうな。

会計の時に負けてくれると言われたが、さすがに負けさせる訳にはいかなかった。

どこまで本当かは分からないが、あの様な台所事情を聞かされたらねぇ。

伊藤は伊藤で私を気遣ってくれたのだろう。

学生時代の伊藤の姿を思い出すとおかしくなる。

あの伊藤がなぁ。

そして伊藤も同様に思っているのかもしれない。

Throw the Iron Ball

とある国のとある町での出来事。

僕は彼女と旅行に来ていた。

彼女の名は聡美。

その聡美と僕は一緒に通りを歩いていた。

そこに一組のカップルが近付いて来る。

そして男の方が陽気に英語で声をかけてきた。

「How do you feel?」

「It’s good!」

彼の陽気さに合わせる様、僕も陽気に応えたつもり。

しかし彼はまだ不満だったらしい。

「That’s not enough yet!」

続けて言う。

「Come on about us!」

本来はそんな簡単についていったりはすべきでないのかもしれない。

しかし、この時の僕は何の疑いもせず、言われるがままに聡美を連れて、ついていってしまった。

そして男はとある店に着くと、店の前で店員と話を始める。

中々、話が終わらない。

見兼ねたのか、女の方が地面に落ちていた金属製の箱の様なものを頭上に持ち上げて、店員の前へと向かった。

そんな彼女に畏れをなしたのか、店員は二人を中へと通す。

それを見て、僕も聡美を連れて店員のところへ行った。

当然なのかもしれないが、料金を請求される。

先に入った二人は料金の事で揉めていたのだろうか。

僕は揉めるのは嫌だし、そんなにお金に困っている訳でもなかったので、素直に払う事にした。

そして僕と聡美も店の中へと通される。

店の中に入ると、そこにはボウリングのレーンの様なものが幾つもあった。

先に入っていた二人はそれぞれのレーンでボールの様なものをレーンの先に向かって投げている。

ものすごく重そうな音だ。

そのボールはどうやら鉄球の様である。

そう。

競技で言うならば、砲丸投げをしていたのだ。

そして僕と聡美もそれぞれのレーンに案内される。

そこには鉄球が幾つか用意してあった。

レーンに着いた僕と聡美も見様見真似で砲丸投げを始める。

幾つかあった鉄球を投げ終えると、自分で取りに行く様だ。

そして、また所定の位置に戻って来て鉄球を投げる。

それを、ただただ繰り返す。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。

僕と聡美、そして僕等を此処へ連れてきたカップルの四人は何とも無しに砲丸投げを止めて店を出る。

店を出るとカップルが言い争いを始めた。

そして女の方がその場を離れていってしまう。

男の方はその場でうなだれている。

先程まで、あんなにも陽気だったのに。

僕と聡美はそんな彼を見て、彼を慰める。

そして僕は夢から醒めた。